変わりゆく海

昨年の夏前から、神湊で大規模な港湾工事が始まっています。

神湊というのは八丈島の東側に位置する大きな漁港で、たくさんの漁船が係留されています。私たちは、その漁港のほんの一部を間借りしてダイビングをさせてもらっていました。ダイビングエリアとしてはとても狭くて浅いのですが、エントリー口では足が立つし、周りは堤防で囲まれているのでウネリや流れの影響を受けることがなく、プールのような穏やかさ。つまり、ダイビングのために使えるプールがない私たちにとって、体験ダイビングや講習には最適な場所だったのです。

レグルスでは、そんな神湊に、あえてファンダイビングに出かけることがありました。神湊には、八丈島の自然が手つかずで残されていたら有り得ないような、特殊な環境が作られていたからです。

八丈島は、太平洋の中で、どーんと火山が噴火してできた溶岩の島です。海岸線は全て岩場、海の中も岩だらけ。沖へ出ると深場に目の粗い砂地が広がっています。

ところが神湊は、港として使うために水底の岩盤を掘削して深くし、周囲をぐるっと高い堤防で囲んだため、湾内には目の細かい砂泥が堆積し、他にはない泥地ポイントとなったのです。かつでは見られていた美しいサンゴやサンゴ礁域の魚たちは見られなくなりましたが、代わりに泥地ならではの生き物たちが暮らすようになりました。失った物は大きかったけど、得た物があったわけです。

例えば、カスリハゼやナガセハゼ、ヤツシハゼ、サザナミハゼ、などのハゼたちや、タテヤマベラやクロスズメの幼魚が見られたことがありました。波打ち際に近い所では、大量のクサフグの群れ。楽しくて、連日カメラを持って通った日もありました。

カスリハゼ

ところが、また工事。

元々広くなかったダイビングエリアはさらに狭まり、潜って良いのは水中に立てられた旗の内側部分だけとなりました。

神湊

そして外側には巨大な台船が停泊し、水底を掘削し、岸壁を削り、新たな壁を作って埋め立て、港の形を変えようとしています。大掛かりな工事のため、完成には数年かかるようです。

巨大な台船

水中で聴こえる音と振動も半端なく、透明度は落ち、新たに降り積もる細かい砂泥のために生き物は姿を消していっています。

きっと、この工事期間中には、何もいない海になっていくのでしょう。

神湊

そもそも港の一部を間借りしている私たちが、工事をどうのこうの言う立場ではないかも知れません。

それでも、今まで出会った生き物たちの環境が失われていくのを見るのは、やはり残念。早く工事が終わって、新たな環境が安定し、また新たな生き物たちと出会える日を、首を長くして待つのみです。

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水谷
水谷 知世

昭和40年代生まれ
兵庫県出身

一見、負けず嫌いで男勝りというイメージだが、実は繊細な女性らしい一面を持つ、頭の回転はレグルス一番!!の頼もしい存在である。(レグルス親方・談)

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