ガイドのつぶやき - 伊豆諸島・八丈島からThe Diving Junky Magazine

ウサギの誕生

さぁ、今月からいよいよ辰年です。皆さん、良いお年をお迎えでしょうか。

今年も昨年同様、宜しくお願いいたします。

先月号でも書きましたが、一昨年はウミウサギの当たり年でした。昨年はタツノオトシゴの仲間の当たり年でした。まるで私たちが年賀状に使いたがっているのを海の神様が知っているかのようでした。しかし、ウミウサギは一昨年だけでなく、年賀状の出番が終わってしまった昨年も、引き続きたくさん見られたのです。

まず、初めて卵を見つけたのは八重根、11月25日のことでした。

便利ですね、デジタル写真って。別に自分で記録しておかなくても、データーに撮影日が入っているんですもん。

その時、私はゲストの方と潜っている最中でした。チームの中にお一人だけエア消費の早い方がいらっしゃって、私とその方の二人だけが他の人たちとは別行動でエキジット口へ向かっているところだったのです。急がなくてはと思いつつ、途中でウミウサギがたくさん付いている根の近くで立ち止まり、その方に紹介しました。そこで、ふと、白くて丸いものの集合体に目がとまってしまったのです。これは卵に違いない、と思った私は、急がなくては!と思いつつ、ちょっと写真を何枚か撮らせてもらいました。

ウミウサギ

よくよく考えてみると、ウミウサギ自体はたくさん見ているのに、卵を見るのは初めてです。ウミウサギも大きいけど(10センチ前後)、卵もずいぶんと大きい(7ミリくらい)のね〜と感心しました。こんなに大きな卵から出てくるってことは、稚貝も最初から大きいのかしら? もしかしたら、ハッチアウトしたばかりのウミウサギを肉眼で確認できるのかも知れない。これは、きっと誰もみたことがないに違いない!もしかしたら初記録だわ♪

そんなに期待でワクワクしておきながら、次に見に行ったのは12月2日です。1週間の間、風邪をひいて寝込んだり、大掃除を始めたりしていました。久しぶりに同じ場所を見てみると、初めて見た時よりもたくさんの卵が付いていました。周りに複数のウミウサギがいて、どれが生みの親だったのかは、イマイチわからず。それよりも驚いたのは、確か真っ白だったはずの粒が、透明な部分と白い部分の染め分けになっていたのです。

ウミウサギの卵

近づいてみると、1個1個の粒のなかに、ものすごく小さな白い粒が半分ずつ入っているのが見えました。つまり、私が卵だと思っていたものは卵ではなく、小さな卵が詰まったカプセルのようなものだったのです。

ウミウサギの卵

実は、初めて見た時、卵のサイズが大きいことだけでなく、その数の少なさにも驚いていました。貝は、大好物にしている魚や甲殻類がたくさんいるので、生存率は高くないはずです。子孫を残すためには、相当な数の卵を産んでおかなくてはなりません。しかし、カプセル1つ1つに数百個の卵が入っているとすれば、納得できる数になるでしょう。その代わり、最初に期待していた「ハッチアウトを肉眼で確認する」というのは、きっと無理だろうなあ、と膨らんでいた期待が一気にしぼんでしまったのでした。

それでもせっかく始めた定点観測なので、12月7日にまた見に行きました。すると、色が少し茶色っぽくなってきていました。それに、2日に見たときのと比べると、カプセルの中で卵が散らばっているように見えませんか? 2日の卵は、カプセルの下半分に堆積していますが、7日の卵はカプセルの内側全体に張り付いているようです。

7日の卵

次に見に行ったのが12月14日です。卵のカプセルはこげ茶色っぽくなっていました。しかも、カプセルの中は、ぎっしり詰まってパンパンになっているという感じです。何とかしてカプセルの中身の方にピントを合わせたかったのですが、どうもハッキリ撮ることができません。等倍のレンズでは、これが限界かな?と思い、次に親方の2倍テレコンで撮りに行くことにしました。ところが既に、この時撮った写真には、カプセルに付着する稚貝の姿が写っていたのです。

卵のカプセル

2倍テレコンのレンズを借りて撮りに行ったのが12月19日でした。

この時、親方と、若いスタッフのほのかちゃんも一緒に3人で出かけました。ほのかちゃんは肉眼で見えたそうですが、ローガンズの私と親方は、テレコンで見て驚きました。何と、カプセルの中で、こげ茶色の粒がものすごいスピードでグルグル回っているのです。それはまるで、ジューサーの中で撹拌されている果肉入りのジュースのようでした。きっと、カプセルの中では、既に卵が孵化しているのでしょう。生まれた稚貝たちが全員の力でカプセルを破ろうとしているのではないでしょうか。

テレコンで撮った写真には、やはりカプセルから出たばかりと思われる稚貝が付着しているのが写っていました。

卵のカプセル

稚貝たちは、付着したまま成長するのではなく、この後しばらくは浮遊生活を送るのではないかと思います。

卵のカプセル

今はもう、どのカプセルも空っぽになって、抜け殻だけが残っています。

たくさんの稚貝たちは、今頃どの辺りを旅しているのでしょうか。

今年一年、素敵な旅ができますように。

" ウサギの誕生 " へのコメント

  1. じゅんのすけ: 2012年1月11日 10:41 PM

    そういえば、これをリクエストするのを忘れていました。

    ウミウサギはあんなに沢山いるのに卵は珍しいってことは、
    産卵自体、条件が揃うのが難しいんでしょうかね?

    また産卵しないかなぁ。

  2. み: 2012年1月14日 8:06 AM

    これは、リクエストされても、もう抜け殻しかありませんからねえ。次回、いつ卵を見つけられることやら。いまだにウミウサギそのものは、いっぱいいるのに不思議です。

  3. Julia2012年1月18日 12:55 PM

    うわーーー

    これが → こうなった!

    まさにの瞬間とらえてますね~

    私が見た時は確か茶色くなってました・・ 笑

  4. み: 2012年1月21日 5:08 PM

    Juさん、
    先日また新たな卵を見つけましたよ!!
    今回は、そばにウミウサギがいなかったのですが、見たことがあるのでウミウサギだとわかりました。
    一度認識してしまえば、これからもっと見つけられるかも知れません。

水谷
水谷 知世

昭和40年代生まれ
兵庫県出身

一見、負けず嫌いで男勝りというイメージだが、実は繊細な女性らしい一面を持つ、頭の回転はレグルス一番!!の頼もしい存在である。(レグルス親方・談)

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