いまどきの祭り

一緒に暮らしていた祖母がなくなって以来、なんとなく毎年12月に墓参りのために奈良と京都へ行くという習慣ができつつあります。昨年も12月中旬に行ってきました。ちょうど寒波襲来で昼間の新宿のビルの電光掲示板に7℃と表示されていた時。朝の8時半の新幹線に乗るため、埼玉の実家を出たのが6時頃。本当に底冷えのする寒さでした。もちろん、目的地の奈良に着いた時も冷え冷えとしていて、昼食をどこで食べるか、ぶらぶら歩きながら店を探すなんて、そんな気になれない寒さでした。

ところが、JR奈良駅を出たとたん大変な人だかり。すぐ近くにあるホテルに、まず荷物だけでも預けようとしていたのですが、人が多すぎてすぐにたどり着けそうにありません。一番人が密集している交差点に出てみると、なんと馬が歩いているではありませんか。よく見ると、その前後に神主さんのような格好をした人、烏帽子をかぶった人、古風な着物を着た人、巫女さんのような人、いろんな人達が連なって歩いていくのです。大勢の人だかりは、その行列を見物している人達で、信号が何に変わろうと動く気配がありません。

後で知ったのですが、ちょうど春日若宮おん祭が開催されているところで、私たちはそのメインとなる行事の「お渡り式」に出くわしたのでした。春日大社と言えば、世界遺産にも登録されている、1300年もの歴史を持つ神社。春日若宮おん祭は、春日大社の年中行事の中で、国の指定重要無形民俗文化財に指定されている有名なものなのです。わざわざ遠方から見に来る方も多い大イベントに、何も知らずにちゃっかり見物していたのでした。

先ほども言ったように、ちょっと交差点で眺めているだけでも、いろんな装束を着た人達や馬が目の前を練り歩いて行きます。これは、若神宮の元へお参りする芸能集団の行列で、第一番から第十二番まで、要は12種類の団体さんに分かれて順番に行進していきます。

トップバッターの第一番は日使(ひのつかい)。

この祭に向かう関白藤原忠通が途中で病気になり、急遽お供のものに、その日の使いをさせたことから始まる行列だそうです。藤原忠通は、この頃長年続いていた大雨洪水による飢饉に苦しんでいた人達の救済のために、若宮神社を造営した人。馬上の人は、その関白に格式を表す衣装を身に着けた、この行列の主役とも言える役の方なのです。

馬をひいている人の足元

ところが、よく見ると、馬をひいている人の足元が・・・スニーカー??

寒くて、足が冷えるからかしら? それとも、草履が足りなかった? と、最初は思いました。最近の人は、寒いからってスニーカーなんて履いちゃうのね。他にも、スニーカー履いている人、いるのかしら??

しばらく見ていたら、どうやらスニーカーを履いているのは、馬をひいている人だけでした。馬が暴れたり、走り出した時に、素早く対応できるようにスニーカーを履いていたんですね。失礼しました。

次の写真は、第五番の馬長児(ばちょうのちご)。

山鳥の尾の飾りを付けた笠をかぶり背中に造花を背負った美しい少年を騎馬に乗せ、その後ろに短冊を付けた笹を持った従者が並ぶ行列です。

先頭に立っている神主さんのような男性

よく見ると、先頭に立っている神主さんのような男性。

携帯電話で電話しながら歩いています。まさか、友達と会話中なんてことは、ないでしょう。前後の係りの人達と、現在位置の確認をしたり、周囲の混雑状況の報告をしたりしているようでした。途中で、人が密集してなかなか前に進めなかったり、馬が機嫌を損ねて動かなくなってしまったり、予定通りにいかないことが多そうです。携帯電話で連絡が取り合えれば便利ですよねぇ。

でも、全体の雰囲気とは全く合っていなくて、おかしかったです。

1300年前の、真剣に飢饉からの救済を願ってこの祭りに参加していた人達が、今のこのお渡り式を見たらどんな風に思うでしょうね?

行列の最後、第十二番は、大名行列。こんなの平安時代はなかったものでから、後から付け足されたものなのだそうです。江戸時代のものがあるのであれば、明治〜平成の芸能を象徴するような行列も、付け足されれば良いのにな。

どんな行列になるのか、とても見てみたいです。

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水谷
水谷 知世

昭和40年代生まれ
兵庫県出身

一見、負けず嫌いで男勝りというイメージだが、実は繊細な女性らしい一面を持つ、頭の回転はレグルス一番!!の頼もしい存在である。(レグルス親方・談)

伊豆諸島・八丈島
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